『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を見て、いろんな金融事件を思い出す

レオナルド・ディカプリオ主演の映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』がAmazonプライムで無料で見られたので、今さらながら見ました。

途中でたまにコマーシャルが入るけれど、3時間近くある映画なので、むしろいいトイレ休憩になります。

映画の主人公は、実在の株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォート。

ペニーストック(非常に安い小型株)を高額なコミッションで売りまくり、さらに「Pump and Dump」と呼ばれる株価操作などで荒稼ぎ。金、女、ドラッグ、豪邸、ヨット……と、これでもかというほど欲にまみれた生活を送ります。

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そして当然ながら、そんな生活がいつまでも続くわけもなく、FBIの捜査が迫り、資産を海外に隠し、最後には転落していく。

噂には聞いていましたが、本当に最初から最後まで「欲、欲、欲」の映画でした。

そして、これが実話をもとにしているというのだから、またびっくり。

ベルフォートは最終的に証券詐欺やマネーロンダリングなどで有罪となりますが、実際に刑務所にいたのは22か月ほどだったそうです。

「え、あれだけやって22か月?」

と思いましたが、捜査に協力して仲間について証言するなど、当局との司法取引が量刑に影響したようです。

そして現在は、セールストレーニングやモチベーショナルスピーカー、著者などとして活動しているとのこと。

人生、いろいろです。

そういえば、昔いろんな金融事件があった

この映画を見ていたら、2000年代初頭に相次いだ企業・金融事件を思い出しました。

当時は新聞(取ってたなー)やテレビのニュース(見てたなー)で毎日のように名前を聞いていました。

「エンロンが大変らしい」
「ワールドコムがどうした」
「タイコのCEOが……」

とニュースになっていたけれど、当時の私は、

「なんか悪いことしたらしい」

くらいしか分かっていませんでした。

あれから20年以上。

今さらですが、チャッピーさんに「結局、あれは何をやった事件だったの?」と一つずつ解説してもらいました。

エンロン事件 2001年

簡単にいうと、

会社が本当はかなり危ない状態なのに、会計を駆使して、ものすごく儲かっている優良企業のように見せていた事件。

特に有名なのが、SPE(特別目的会社)などを使って、借金や損失をエンロン本体の決算の外へ追い出す方法です。

実質的にはエンロンがリスクを負っているのに、別会社に移して、

「これはうちの負債ではありません」

というような見せ方をしていたわけです。

ほかにも、将来得られると予想した利益を早い段階で計上する会計手法をかなり積極的に使い、実態以上に業績が良く見える状態が続いていました。

そしてエンロンの監査を担当していた大手会計事務所Arthur Andersenまで巻き込まれ、最終的には事実上解体。

会計業界にとっても歴史的な事件になりました。

Tyco International 2002年

こちらは少しタイプが違います。

当時のCEO Dennis KozlowskiやCFOらが、会社のお金や無断のローン、報酬制度などを利用して巨額のお金を自分たちに流していたことが問題になりました。

会社のお金でとんでもなく豪華な生活をしていたことでも有名です。

こちらもある意味、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』的な「金銭感覚が完全におかしくなった世界」。

WorldCom 2002年

こちらは会計を少し知っていると、逆に「そんなことで?」と思うほど仕組み自体はシンプル。

本来は費用として計上すべきものを「資産」に振り替えて、利益を大きく見せていました。

通信会社なので巨額の回線使用料などが発生します。

本来ならその年の費用になるものを資産として計上すれば、その年の費用が減る。

すると、本当は赤字なのに黒字に見せることもできてしまいます。

やっている仕訳自体は単純でも、金額が何十億ドルとなれば会社の業績を丸ごと変えてしまいます。

バーナード・マドフ事件 2008年

そして、リーマンショックの頃に発覚したのがBernie Madoff事件。

マドフはNASDAQの会長を務めたこともある、ウォール街では非常に有名な人物でした。

ところが実際には、長年にわたって史上最大級のポンジ・スキームを運営していました。

新しい投資家から集めたお金を、本当の投資利益であるかのように以前の投資家へ支払う。

口座を見ると毎年安定して利益が出ているように見えるけれど、実際には説明されていたような運用は行われていなかったのです。

2008年の金融危機で投資家から解約が相次ぎ、とうとう資金が回らなくなって発覚。

マドフには懲役150年が言い渡され、刑務所で亡くなりました。

しかし株価は長期的には上がっている

ここまで並べると、

「やっぱり金融の世界、怖い」

という話で終わりそうなのですが、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を見ながら、私はむしろ別のことも考えていました。

映画に出てくる人たちも、ここに挙げた事件を起こした人たちも、欲にまみれ、一時的に巨万の富を手に入れ、そして転落していきました。

一方で、不正などせず、長年淡々と株式投資を続けて資産を増やしてきた人も大勢いるわけです。

むしろ、そちらのほうが圧倒的に多いのでしょう。

アメリカの株式市場は、暴落を何度も経験しながらも、長い期間で見れば右肩上がりを続けてきました。

もちろん個別株なら消えてしまった会社はいくらでもありますし、今後も同じように上がり続ける保証などありません。

それでも、長期間にわたってS&P 500などに投資してきた人は、アメリカ企業の成長とともに資産を増やすことができました。

そして映画を見ながら、

「労働でお金を稼ぐ人」と「お金にも働いてもらっている人」の差って、長い年月でこんなに大きくなるのか……

と、なんとも言えない気持ちになりました。

毎月働いて、わずかな給料が振り込まれ、その大半が家賃に消え、スーパーでは値段を見ながら買い物。

その一方で、資産を持っている人は、株価が上がれば資産がさらに増えていく。

なんか、やってられないわ。

映画を見終わってから、そんな気分を二日ぐらい引きずりました。

まあ、他の要因もいろいろあったのですが。

もちろん、だからといって「一発当てよう!」とペニーストックに全財産を突っ込んだら、それこそ『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のカモになる側です。

たぶん大事なのは、ジョーダン・ベルフォートになることではなく、毎月ほんの少しでも、自分の労働で得たお金を「自分の代わりに働いてくれるお金」に変えていくことなのかもしれません。

……と、映画一本から、ずいぶん遠いところまで考えてしまいました。